カルチャー

【惹き込まれる】文章が美しい小説

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綿矢りさ 蹴りたい背中

本文より抜粋

さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、 私はプリントを指で千切る。

余り者には余り物がしっくりくるのだ。いじめじゃない、ごく自然なことなんだ。

違う、ケイベツじゃない、もっと熱いかたまりが胸につかえて息苦しくなって、私はそういう目になるんだ。

当時19歳の綿矢りささんがこの作品で芥川賞を受賞しました。
私でも読める難しさのない文字たちが淡々と話を展開していきます。
一見すると簡単な文章のように思えるのですが、この表現はこれが丁度良い、適当だ、と私は感じています。
これ以上幼稚ではいけないしこれ以上複雑でもいけない、素晴らしいバランスの文章だと思います。
 

森絵都 カラフル

本文より抜粋

この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷ってる。

世の中があまりにカラフルだから、大切なことも見失ってしまうのかな。

この地上ではだれもがだれかをちょっとずつ誤解したり、されたりしながら生きているのかもしれない。それは気の遠くなるほどさびしいことだけど。だからこそうまくいく場合もある。

第46回産経児童出版文化賞を受賞したこちらの作品。
児童文学というジャンルですが、これは大人にこそ読んでもらいたい作品です。
社会に生きていると見失いがちな大切な事を、ストレートで、そして繊細に教えてくれます。
傷が出来てしまったところに貼る絆創膏。
私はこの作品にそんなイメージを持っており、癒してもらいたい時に触れたくなる小説です。
 

角田光代 八日目の蝉

本文より抜粋

どうか、どうか、どうかお願い、神様、私を逃がして。蟬の声が追いかけるようについてくる。

ああ、夏だ、夏だ。いく場所もないし、未来なんかないに等しいのに、目に映る光景は、ともすると縮こまりいじけそうな私の気分を、ゆっくりとほぐし、解き放っていくように思えた。目に映る何もかもがきらきらと光り輝いている。

まだ生きていけるかもしれない。いや、まだ生きるしかないんだろう。

数々の賞を受賞されている角田光代さんの代表作でもあり、映像化もされているこちらの作品。
人間の駄目な部分、どうしようもない部分を隠さず見せつけられ、しかしそれを醜悪なものにはせず心を揺さぶるものに昇華するのが、角田光代さんの作品だと私は思っています。
言葉の1つ1つに血が通っており、さりげない風景描写すら登場人物の心情にリンクしています。
自分がまるでそこに立っているような感覚に旅立たせてくれる、素晴らしい文章です。

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